飾らない、媚びない、そんな印象の彼女が発した言葉が耳から離れない。
気持ちがふと ざらつくの
どうにかしたくて
私は深呼吸する
ソフランアロマリッチのCMのセリフだが、このCMの製作に携わった人は同年代なのかなと感じた。
働き始め、年数も経ち、責任は重くなった。
やりがいを感じることもあるが、余裕がなくなることも。
小さなことに苛立ってしまって、そんな苛立つ自分の小ささが嫌になる。
思考を停止させたくなった。
そんな時、曲が響き出した
ー だけど ここから何処へ行っても 世界は夜を乗り越えていく ー
charaが歌う『あいのうた』
その歌声があの頃に心を連れ戻す
「Charaかな」
高校入学直後前の席に座った子は好きなアーティストを私に聞かれ、そう答えた。
その時私はCharaを知らず、インターネットがまだ学校の進路指導室くらいにしかない時代だったので、その場で調べる余地もなく
「そーなんだーCharaねー」
と薄い反応しかできなかった。
彼女はライダースジャケットを着てた。
私服の学校だったが入学したばかりの頃、同級生はみんななんとなく似たような格好をしている中、彼女は自分の着たい服を着ていた。
少し浮いてたが、彼女はそんなことはお構いなしという感じに見えた。
みんなが高校生活に少しずつ馴染んでいく中、彼女は早退する日や休む日が少しずつ増えていった。
ようやくみんなそれぞれに、自分の「好き」見つけて「個性」を出していくようになった頃、彼女は学校を辞めていた。
私は学校帰り古着屋で服を探し歩くようになり
夏の部室で友人に髪を切ってもらい
岩井俊二の映画をミニシアターへ観に行き
Charaに出会った。
PiCNiCとスワロウテイルの映画のチケットは今でも引き出しに入っているはずだ。
Charaの曲を聴くと彼女のことを思い出す。
周りより早く自分の好きに正直になってた彼女。
彼女は今どんな毎日を送っているだろう。
私がCharaを知るのが早かろうが遅かろうが、彼女は学校を辞めていただろう。
交わることのなかった彼女と私の青春時代。
それでもきっと、それぞれに
このCMが流れると心はあの頃に連れ戻されるのだろう。
今の自分は紛れもなくあの頃の延長だ。
深呼吸をして私も今を歩み出す。